保育内容「言葉」と指導法
- 著者
- 仲本美央・吉永安里 編著
- 版型・頁
- B5判 310頁(2025/02/20)
- ISBN
- 978-4-89347-442-1
- 価格
- 2,200 円(税込)
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本書は、保育現場の子どもと保育者の姿から、保育者養成課程における必須科目である、保育内容の領域「言葉」と「言葉の指導法」を学ぶためのテキストです。具体的には以下、「理論」「方法」「実践」「発展」の4部で構成しています。
第1部では子どもの言葉の育ちの理解に必要とされる「理論」、第2部では子どもの育ちを支えるための指導計画や指導法としての「方法」、第3 部では指導計画や指導法を含めた言葉を育む児童文化の「実践」、第4部では子どもの言葉の育ちの現代的課題を示しながら、よりよい言葉の育ちのあり方やその指導法の「発展」を解説しています。
保育の営みは、日常の生活場面における子どもの姿から始まります。目の前の子どもがどのような言葉を話しているのか、言葉には現れていなくとも子どもの表情や声、身振り、手振りなどでどのような言葉が心の中に広がっているのかを捉える力が必要です。このため、保育者を目指す人は、まず、見えない子どもの心の言葉にも耳を澄ませながら聴きたいという心もちを身につける必要があります。それには、専門的知識や技能を学ぶとともに、自らの感性を豊かにする考え方や努力も必要です。その上で、実際の子どもの言葉の育ちの場面から、状況を読み取る力を習得することが重要です。
そのため本書では、全体を構成するにあたり日常生活における生活文化のあり方や自然との関わりに配慮し、これまでの領域言葉や言葉の指導法のテキストにはあまり示されてこなかった言葉の指導法とは何かを具体的に解説し(第2部)、加えて、児童文化の豊富な実践内容を指導案(部分の立案例)とともに多く掲載しています(第3部)。また、各章に事前学習と事後学習の演習課題を設定しただけでなく、その内容を実習科目の修得時期に応じたものに設定しています。この一連の学びを習得することで、基本的な保育の専門性を身に付けることになります。
最後に、言葉に限らず、子どもたちは環境を通して日々育っていきます。その育ちに関わる人々もその環境の一つです。皆さん自身が、子どもにとってのよりよい人的環境を目指すためにも、まずは、日常生活における自らの身の回りの言葉に対する感覚を研ぎ澄ませてみてください。あなたが言葉の面白さ、楽しさ、美しさ、不思議さなどを感じることができるようになれば、子どもたちにとって豊かな言葉を育む環境の一人になります。そして、自らの豊かな言葉への感覚が培われることによって、目の前の子どもたちの言語化された言葉だけでなく、目に見えない心の中の言葉にも耳を傾けて、子どもの思いや願い、感動、意欲などにも気づくことにもなるでしょう。本書における数々のEpisode からも子どもの一人一人の言葉の背景にある心まで捉えながら学んでいただけましたら幸いです。
(本書「はじめに」より)
主要目次
第1部 保育内容「言葉」の理論
第1章 子どもの言葉の発達を理解する
1.言葉の意義や役割とその発達の捉え方
2.乳幼児期の言葉の発達過程
3.就学前後の言葉の発達
第2章 領域「言葉」のねらいと内容
1.保育における領域「言葉」
2.乳児保育におけるねらいと内容
3.1 歳から3 歳未満児におけるねらいと内容
4.3 歳以上児におけるねらいと内容
5.領域「言葉」と10 の姿、小学校で求められる幼児期の言葉の育ち
第3章 言葉に対する感覚を豊かにする保育とは
1.言葉に対する感覚とは何か
2.世の中の不思議さ・美しさ・楽しさ・面白さから言葉を生みだす
3. 遊びの中で言葉の豊かさに気づく
4. 書くことを通して人と人とがつながる言葉の感覚を身に付ける
5. 子どもの言葉の感覚を引きだし、共感する保育者の感性
第4章 生活の中の言葉
1.環境を通して育まれる子どもの言葉
2.生活の中で広がる言葉・深まる言葉
3.文字などで伝える楽しさを味わう
第2部 保育内容「言葉」の指導法
第5章 保育内容「言葉」の指導法とは:子ども、教材、指導法を研究する
1.保育内容「言葉」の指導法とは
2.子ども理解から始まる指導法の検討
3.教材とは
4.教材を研究する
5.教材研究を言葉の指導法に生かす
第6章 保育場面から子どもの理解を深め、計画・実践・改善の内容を構想する
1.0歳児
2.1歳以上3歳未満児
3.3歳以上児
第7章 子どもの言葉を育む環境構成と保育者の援助
1.話したい・聞きたい意欲を育む援助
2.生活に必要な言葉の習得を支える援助
3.言葉のすれ違いやうまく伝わらないもどかしさへの援助
第8章 特別な配慮が必要な子どもへの対応①:言葉の発達に課題がある子どもへの支援
1.言葉の発達に課題がある子ども
2.一人一人の子どもの育ちを捉える個別の指導計画
第9章 特別な配慮が必要な子どもへの対応②:日本語を母語としない子どもへの支援
1.日本語を母語としない子どもの言葉の育ちとその支援
2.日本語を母語としない子どもへの支援
第10章 小学校教育との連携・接続:領域言葉と小学校国語との連続性のある指導を考える
1.幼児教育と小学校教育の特徴
2.領域言葉と小学校国語科の共通点と相違点とは
3.領域言葉と国語をつなぐ指導計画とは
4.5歳児の長期・短期の指導計画の特徴についての理解
第3部 言葉を育む児童文化
第11章 言葉を育て、想像する楽しさを広げる:「児童文化財」とは何か
1.児童文化財の種類と特性
2.幼児の言葉の発達における児童文化財の意義
第12章 言葉の楽しさや美しさに気づく
1.言葉のリズムを楽しむ?童謡・わらべうた・手遊び・ふれあい遊び・詩
2.言葉の感覚を楽しむ?言葉遊び・なぞなぞ・しりとり・さかさ言葉
第13章 想像する楽しさを味わう
1.絵本
2.物語(幼年文学・児童文学)
3.昔話
4.紙芝居
第14章 表現を楽しむ
1.シアター遊び
2.ごっこ遊び
3.劇遊び
4.人形劇
第4部 言葉を育む保育の今
第15章 言葉をめぐる現代的な課題と展望
1.現代の子どもを取り巻く「人」の環境と言葉の育ち
2.現代の子どもを取り巻く「物」の環境と言葉の育ち
第16章 子どもの言葉を育む保育の実際:子ども同士で紡ぎ合う対話の場
1.実践としての対話
2.クラスタイムから遊びが広がる
3.クラスタイムで問題を解決していく
第17章 その他の言葉の育ちを支える豊かな文化:「地域の特性に合わせた保育実践」
1.地域社会に親しみをもつということ
2.地域とつながる行事
3.異なる国の文化体験
引用・参考文献
おわりに