保育者・教育者になる人のための特別支援教育 ―当事者の声を聴く―

著者
小林芳文 監修・著 武藤篤訓 著者代表
版型・頁
B5判 276頁(2025/02/26)
ISBN
978-4-89347-435-3
価格
2,200 円(税込)
数 量

テキスト採用をご検討の先生方はこちらから見本を取り寄せ頂けます。

テキスト採用をお考えの先生はこちら

概要

障害の当事者、保護者の声を聴いて理解し、インクルーシブ保育・教育の実践に向けて学びを深めよう

 本書では、障害をもっている当事者たちの声をたくさん紹介しています。それは、障害についての知識だけでは「私たちと違う人」「助けてあげる人」という気持ちを生み出しかねないからです。同じ人間として対等に生きるためには、相手のことをよく知ることが必要でしょう。保育士や幼稚園教諭を目指す皆さんには、そんな気持ちを大切にしてほしいと強く願ってのことです。
 それとともに、保育者はやわらかでしなやかな感性と、どんな子どもにも対応できるやわかな実践力が必要でしょう。ピアノでも、絵本でも、手遊びでも、相手に合わせて行うことができなければ、現場では役に立たないでしょう。皆さんのしなやかな感性と表現力を使って、目の前にいる子どもや利用者たちが「どうしてこんなことをするの?」「どうしたらもっと楽しく過ごせるの?」と考えるのが、このテキストのねらいでもあります。
 そのために全国の保育者養成校の先生方に執筆していただくとともに、現場の保育士や幼稚園教諭、介護福祉士、障害の当事者や家族の方など、さまざまな方の声を取り入れています。本書を踏み台にして皆さんが素敵な保育者になれるよう、ともに学んでいきましょう。
(本書はじめにを要約)

主要目次

第1部 障害と当事者、その保育・教育を理解しよう
序 章 障害ということ
  1 障害ってなに?
  2 障害は状況による
  3 障害の捉え方
  4 保育実践における障害の捉え方
第1章 特別な支援ニーズの子どもとインクルーシブ保育・教育
  1 障害のある子どもの保育・教育について
  2 インクルーシブ保育・教育ってどのような支援や課題があるのだろう
第2章 障害児・者の歩んできた道
  1 古代・中世の障害児・者の歩んできた道
  2 近世の障害児・者の歩んできた道
  3 明治維新の社会の転換と障害児・者
  4 障害を持った人の活躍
  5 近代社会における障害者施策
  6 障害のある子どもの保育・教育の展開
  7 これから保育者になる皆さんへ
Column① 人との関係で変わる課題の見え方
Column② 障害当事者のきょうだいから見た「発達障害」について
Column③ 肢体不自由を支えた楽しい活動 ―健太、ひまわりのように―
Column④ 君は見学でいいよ

第2部 障害のタイプと子どもや保護者の思い、その援助を理解しよう
第3章 肢体不自由児・者の思いと理解・援助
  1 肢体不自由の理解
  2 肢体不自由のある生活の理解
  3 肢体不自由児(者)・親の思いへの理解
  4 保育における援助と配慮
  5 遊びの工夫・援助
第4章 視覚障害児・者の思いと理解・援助 ―視覚障害と感覚―
  1 視覚の成り立ち
  2 視覚障害の主な眼疾患と見え方
  3 視覚障害児と発達
  4 視覚障害児・者への援助 ―合理的配慮―
  5 視覚障害者への接し方
第5章 聴覚障害児・者の思いと理解・援助
  1 聴覚障害とは
  2 聴覚障害をめぐる当事者の思い
  3 聴覚障害児への保育における配慮
第6章 知的障害児・者の思いと理解・援助 ―知的障害の理解とその世界―
  1 「知的障害」とは何か?
  2 どうしたら個人の具体的なニーズを把握できるのか?
  3 特別支援学級に通わせる子どもを持つ親の声
  4 「知的障害」のある子どもの特性の把握に向けて
第7章  発達障害児・者の思いと理解・援助Ⅰ ―自閉スペクトラム症の理解とその世界―
  1 はじめに ―自閉スペクトラム症とは―
  2 自閉スペクトラム症の歴史的変遷
  3 ASDの子どもと養育者の状態像について
  4 ASDと問題行動
  5 おわりに ―自閉スペクトラム症の子どもと関わる―
第8章 発達障害児・者の思いと理解・援助Ⅱ ―注意欠如多動症・限局性学習症の理解とその世界―
  1 発達障害と感覚特性
  2 ADHDの子ども
  3 LDの子ども
第9章 保護者の思いと支援、関係機関との連携
  1 保護者とのかかわりを考える
  2 保護者の思いを想像する
  3 親子を支えるシステム
  4 障害告知後の保護者の思いを想像する
  5 診断を受けることと保護者の思い
  6 親子を支えるさまざまな機関の連携
  7 保護者との信頼関係を深めるために
第10章 発達支援のしくみと個別支援計画
  1 発達支援の歴史と考え方
  2 障害児通所支援の種類としくみ
  3 達支援における個別の計画
第11章 多様な支援を必要とする子どもの思いと理解・援助 ―貧困・虐待・外国につながりのある子・性別違和等の子―
  1 多様な支援の必要な子どもとは
  2 貧困と子どもとその家族について
  3 子どもの虐待とその影響
  4 外国につながる子どもの保育
  5 ジェンダーバイアスと性別違和のある子ども
Column⑤ ともに育ち合うとは ―Nくんの存在が2時間で友達を変え、1年間で大学生の人生も変えた―
Column⑥ 視覚障害を持つ子どもとして園に通った日々の思い出
Column⑦ 視覚障害(全盲)の親の子育てと保育所
Column⑧ 「好き」から始まり仲間とともに育ちあう関わりを
Column⑨ 明日が待ち遠しいと思える保育へ

第3部 保育における障害のある子どもへの支援を理解しよう
第12章 個々の発達を促す幼児期の教育・保育 ―保育場面のなかで個々の発達に応じる―
  1 幼児期の教育の基本
  2 障害のある子どもの指導
  3 障害のある子どもの個々の発達を促す幼児期の教育・保育のこれからのあり方
第13章 集団の力の関わりと育ちあい ―保育場面のなかでの集団の力の関わりと育ちあい―
  1 集団生活の意義
  2 個の育ちと集団(の力)
第14章 基本的生活習慣や社会性を育てる
  1 保育のなかの基本的生活習慣や社会性
  2 事例から基本的生活習慣や社会性を育むことを考える ―3つの事例から―
  3 保育者の専門性
第15章 保育者の保育力を高めること
  1 保育現場の現状
  2 保育者の保育力を高めるための取り組み
Column⑩ 子どもたちが笑顔になれる音楽活動
Column⑪ うれしい・楽しい・おいしい
Column⑫ 楽しかった幼稚園生活
Column⑬ うちの子、ほかの子どもに近づけないでください ―園内支援体制で支える―

第4部 インクルーシブ保育・教育の実践に向けて
終 章 からだ・あたま・こころを育てる ―発達の喜びを引き出すムーブメント教育・療法―
  1 「からだ」「あたま」「こころ」の機能が結びついて進む子どもの発達
  2 「障害」とは、発達を促進する「喜び」が阻害された状態
  3 喜びを核に、子どもの発達を伸ばす「ムーブメント教育・療法」
  4 ムーブメント活動プログラムの具体例
  5 おわりに
Column⑭ 失敗から生まれた多世代交流会 ―施設間の交流から、真の地域での多世代交流を目指して―
Column⑮ 特別支援学校に通学する児童の放課後の居場所について