保育課程の研究―子ども主体の保育の実践を求めて―
- 著者
- 阿部和子・前原寛・井上裕美子・宇佐美純代・内村真奈美・久留須泉子 著
- 版型・頁
- B5判 184頁 (2009/05/20)
- ISBN
- 978-4-89347-135-2
- 価格
- 2,750 円(税込)
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概要
本書は、これまでも言われてきていることであり、新保育指針においても明記された保育の計画-実践-記録-評価-計画の修正-実践……という保育の大きな環を「子どもの生活や育ち」と意識的に往還させようとする試みです。そのように保育実践を考えようとしますと、まず、私たちの実践の下敷きになっていて、普段あまり意識に上ることのない「子どもの育ちをどのようにとらえているのか(子ども観)」を意識化することが重要になります。そして、子どもにどのように育ってほしいのかという育ちの方向に対する目標(子どもの育ちの方向に対する願い)を意識に上らせることになります。それから、子どもへの願いをもとに、日々の生活をどのように実践するのかという大人のあり方や方法が検討されることになります。子どもとの生活を営むための見えない枠組みが検討されるだけでは不十分です。それは、どんなに注意深く子どもを見、理解しても、他者である子どもの「ここの今」を生きる欲求が、大人の理解を超えているからです。こうして、子どもとの生活のありようが振り返られ、大人の子ども理解やそれに基づく生活の枠組みを再構成する必要に迫られます。
このような営み(保育)は、子どもと生活をともにし続けようとする大人を成長させ、子ども自身を成長・発達させると考えられます。本書は、大人と子どもの成長・発達に寄与する保育の全体を包括する「保育課程」、それを「ここの今の子どもの姿」を発達過程の中に位置づけて展開する指導計画を標榜するものです。指導計画は、実際の子どもとの生活と保育目標の間を行き来しながら修正されるものであるという考え方を強く意識しています(本書「はじめに」より)。
主要目次
1章 主体としての子ども-子ども観と保育観をめぐって-
1 主体としての子ども
2 保育所保育指針からの子ども観・保育観の読み取り
2章 保育課程の射程
1 保育所保育の広がり
2 幼稚園教育要領との相違点と共通点
3章 保育課程と指導計画の考え方
1 保育課程とカリキュラムの考え方
2 計画→実践→評価→計画~の輪
3 自己評価―専門性の発達
4章 保育課程が具体化されていくために
1 「保育と子育て研究会」の立ち上げ
2 創発カリキュラムとの出会い
3 クラスの指導計画への反映
4 「環境による保育」を園庭環境の視点で計画する
5 保育実践を支えるために―求められる創意工夫―
6 安良保育園の概要
5章 従来型の計画からウェブ式へ
1 試行錯誤のプロセス
2 子育てサークルの計画
3 一時保育の指導計画
6章 ウェブ式指導計画の展開
1 0・1歳児の保育計画
2 4歳児の指導計画
7章 子どもが遊び込める園庭環境
1 保育の環境について
2 固定遊具は「固定」なのか
3 園庭環境を構成する
4 オープンエアの保育園
5 一年間の園庭環境の構成計画
8章 保育あれこれの工夫
1 計画と記録を書く工夫
2 行事の小道具の蓄積
3 クラス王国からの脱出―協働の専門性を発揮するために―
4 学びの楽しさ―そのための時間を作り出す工夫―