概要
「心が動けば身体が動く」「身体が動けば心が動く」心身の相関関係を子どもの内発的な動機を軸に紐解く
本書は3部構成になっている。
第1部では,古代から今日に至る人々の健康の概念規定を中心に,その知恵を捉えている。また,そのような文化背景を前提に,現代の子どもの身体の変調に関して,人間の身体の仕組みについて再確認し,幼児期の身体と脳の発達の特徴について概観している。
第2部では,人間が運動をすることで、身体と精神を統合しながら環境と調整しているその方略に関して,情報処理システムの観点から捉え,遊びと結びつけて考えている。さらに,いわゆる「運動能力」について,知的,情緒的,社会的な発達の側面について考究し,今後,就学前教育のあるべき環境のありようについて考えている。
第3部では,生涯にわたって“我を統一する主体”の回復に焦点を当てる。子どもの内発的動機づけの視点から,その意志の働きについて,運動有能感や自己決定の獲得を土台に,我を忘れて純粋経験を成熟させていく遊びとの関連を捉えている。それらを踏まえ,これからの就学前教育の環境のありようや、就学前教育の方向性そのものについて,生活や遊び,労作環境と運動経験の関連、および指導のありかた,就学前教育を担う社会的役割の重要性について考えている。