幼児教育知の探究13 幼児理解の現象学

著者
矢野智司
版型・頁
A5判 320頁 上製(2014/03/10)
ISBN
978-4-89347-113-0
価格
2,750 円(税込)
数 量

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概要

子ども理解の臨界点と生命論的展開

「幼児」は英語でinfantと呼ばれるが、この語はラテン語のinfãns(in-否定+fãr話す+-ans現在分詞語尾)に由来している。つまり「幼児」の原義とは、未だ言語活動をもたない生のことである。そして、これから私たちが、この言葉を未だ語らない生を語るために、このテクストで取りあげるのは、言語による分節化を経ていない主客未分の純粋経験であり、言語化できない溶解体験であり、言葉をもつことのない動物的生である。その一瞬においては差異をもたず、一瞬の後には差異が生じて分節化された時間となる、臨界点ともいうべき午前0時の生である。したがって、私たちの「幼児理解の現象学」とは、「午前0時の幼児理解の現象学」ということができる。言葉で語ることのできない生を、言葉によって解明していくこと、このことが不可能な課題の理由である。しかし、幼児教育の独自性は、この語ることの困難さのうちに、集約されてもいる。本書は、幼児理解の不可能さの体験からはじまり、幼児の臨界点の事象に焦点を当て、語ることのできない幼児の生を言葉でもって語ることで、これまで幼児教育学や発達心理学をはじめ人間諸科学が提供してきた、なめらかな幼児理解の枠組みから未知の外部へといたる、「幼児理解の現象学」の冒険の書である。

主要目次

序 章 子ども理解の臨界点と生命論的転回―「幼児理解の現象学」の外へ
第1部 メディア身体の人間学
  第1章 生命論とメディア身体の教育学
第2部 メディアが開く子どもの生命世界
  第2章 健康領域論:運動体験がもたらす世界の転回
  第3章 言葉領域論:子どもに世界を開く言葉の力
  第4章 表現領域論:メディアが開く子どもの表現世界
  第5章 人間関係領域論:子どもが集団遊びのなかで作るメディア
  第6章 環境領域論:子どもが動物と出会うことの畏れと喜び
第3部 子どもの生命変容
  第7章 生命の子どもとメディア変容
  第8章 子どもの悪の体験と自己の変容
第4部 生命の幼児教育
  第9章 メディアが開く生命の幼児教育