本書は、これから保育者になる人、現在、保育職にある人が運動を実践するとき理解していなければならない基本的なことを、理論と実践で示している。
本書の構成は、<Part1>理論編、<Part2>実技編から成っている。
Part1は理論編であるが、ここでは4つの章を設け、Chap.1 運動はなぜ幼児に大切か、Chap.2 遊びと運動、Chap.3
運動指導のポイント、Chap.4 運動にかかわる現代的課題、を解説した。
Chap.1では、なぜ幼児期に運動が必要なのかを、運動能力低下という現代的な問題を、健康的な視点と運動能力検査の結果の視点から解析し、現代の子どもが抱えている課題に関して言及している。また、運動することが、身体、動き、心、社会性、知的な発達にどのようにかかわっているかを示し、発達を支える運動のあり方を示した。
Chap.2 では、運動と名のつく活動だけが運動ではなく、生活そのものが活動的であることが多様な動きの経験につながると考え、生活としての運動と遊びの中の運動に分けて記述し、そのような人間の行動を生む動機づけに関して説明をしている。
Chap.3 では、運動指導のポイントとして、運動を具体的に考えるとき、運動内容、方法を検討することが求められるが、この点に関して、運動の量と質、安全、援助等に関する視点から具体的に記述した。
また、Chap.4 では、現在、運動指導で課題になっていることを、トピックス的に7項目取り上げ、解説した。
Part2の実技編では、運動を幅広くとらえて、2つに分けて編集した。従来、運動的活動として取り上げられてきた内容を「運動編」として、また、幼児期の運動(からだを動かすこと)を運動遊具の使用や運動遊びと呼ばれるものに限定せず、従来、運動と認識されない遊びの中に運動的な要素が含まれるものを「その他」とした。
具体的には、運動編として1歳児から5歳児まで12項目(60例)、その他として8項目を3例ずつ(24例)示した。また、この時期に必要とされる運動の量と質を高める内容をそれぞれの例に具体的に入れ、集団で行う方法も示した。
なお、本書で示した年齢は目安であり、それぞれの子どもの運動経験や園の環境により異なるので、日頃の子どもの姿から保育者の判断で実践してほしい。
(本書まえがきより)
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