本書は、従来の「児童福祉」ではなく「子ども家庭福祉」と表題しました。それは第1に、「児童」は保護の対象で、権利を保障される受身の存在としてとらえられてきたのに対し、「子ども」は権利の行使主体として発展的な意味をもっていること、第2に、児童福祉が、親を含めた社会の責任として実践される子どものウエルビーイング(well-being)、すなわち、子どもの人権の尊重・自己実現、子どもが子どもらしさを保ち、自らの潜在的な可能性を開花させつつ生き生きと生活している状態を促進するため継続した努力が必要になるということ、第3に、虐待や放任といった親子関係が不安定な状況の中で、親になりきれない親に対し、あるいは親子の信頼関係・愛着関係が十分できない親に対する子育て・親育ての支援が急務とされ、家庭に身をおく子どもたちにとって、家庭生活は切っても切り離すことができない存在なのです。
このように、子育て支援、子ども自身の成長・発達の支援、親子関係の支援が現在の子どもの福祉の中心であることに鑑み、あえて児童福祉ではなく「子ども家庭福祉」としました。
子どもが生活をする第一義的な場所は家庭しかありません。しかしその家庭が乱れ、子どもたちが犠牲になっています。本書では、とくに第3章で力説しました。
子どもを含め、“人は苦しみのために生きているのではなく、楽しみのために生きている”のです。そしてそれを実践するのが福祉です。(本書まえがきより)
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