本書は、これまでも言われてきていることであり、新保育指針においても明記された保育の計画−実践−記録−評価−計画の修正−実践……という保育の大きな環を「子どもの生活や育ち」と意識的に往還させようとする試みです。そのように保育実践を考えようとしますと、まず、私たちの実践の下敷きになっていて、普段あまり意識に上ることのない「子どもの育ちをどのようにとらえているのか(子ども観)」を意識化することが重要になります。そして、子どもにどのように育ってほしいのかという育ちの方向に対する目標(子どもの育ちの方向に対する願い)を意識に上らせることになります。それから、子どもへの願いをもとに、日々の生活をどのように実践するのかという大人のあり方や方法が検討されることになります。子どもとの生活を営むための見えない枠組みが検討されるだけでは不十分です。それは、どんなに注意深く子どもを見、理解しても、他者である子どもの「ここの今」を生きる欲求が、大人の理解を超えているからです。こうして、子どもとの生活のありようが振り返られ、大人の子ども理解やそれに基づく生活の枠組みを再構成する必要に迫られます。
このような営み(保育)は、子どもと生活をともにし続けようとする大人を成長させ、子ども自身を成長・発達させると考えられます。本書は、大人と子どもの成長・発達に寄与する保育の全体を包括する「保育課程」、それを「ここの今の子どもの姿」を発達過程の中に位置づけて展開する指導計画を標榜するものです。指導計画は、実際の子どもとの生活と保育目標の間を行き来しながら修正されるものであるという考え方を強く意識しています。(本書「はじめに」より)
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