萌文書林

幼児教育知の探究5 保育の中の発達の姿

著者
佐藤公治 編著
版型・頁
A5判 274頁 上製 (2008/10/22)
ISBN
978-4-89347-105-5
税込価格
2,700円(本体2,500円+税)

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概要

本書では、幼児期を中心にして人間の発達を人間が外に向かって自分の考えや意志を表現として表す行為の視点から捉えていくことを試みる。これまで心理学では心の内部や心の振る舞いに注目して、人間が行為すること、表現することを十分に扱ってこなかった。私たちは自分の考えや意志を形に表すことで、自分の考えていることを形作ることができる。同時にそれは他者へのメッセージとなり、互いを理解し合い、共同で活動していくきっかけになっていく。そして個人が外に向けて何かを形にしていこうとする営み、表現しようという行為は、共同の活動の中で新しいものを生みだしていく。これが創造的活動である。
具体的に本書で取りあげるのは、幼児の共同遊びであり、描画活動である。あるいは、共同で絵本の読み聞かせを楽しむという活動である。子どもたちがそこで表現行為として展開しているものも、言葉で物語をつくりあげることがあったり、遊具や様々な道具を使って遊びを構成していく活動であったり、描画として表現したりすることである。
このような試みを通して、もう一度、発達心理学は何を語ってきたか、あるいはどこまで人間の発達の現実の姿を描くことができたのかを問い直し、子どもの日常の現実に迫るためにはどのような視点をもつべきなのかを考えてみたい。そのことは日本の保育・幼児教育を豊かなものにしていくことに発達研究がどのような貢献ができるのか、その道を探ることでもあろう。
本書では、このような問題意識に立って、子どもの日常の姿、そして子どもの成長と発達についてもう一度考えてみたい。本書全体の内容を言い表すキーワードは、表現行為、パトスとロゴス、身体、想像、そして空間と時間の五つである。

第1部の発達をみる「視点」は、五つの章から成っている。第1章では、心理学に限定しないで人間精神とその営みについて議論を展開している哲学者たちの声を聞きながら、人間の発達を考えていくための基本的な視座を確認する。第2章では、発達研究と保育・幼児教育にも大きな影響を与えてきたピアジェの発達理論を批判的に検討する。第3章では、ピアジェと対比されることが多いヴィゴツキーの理論を取りあげ、とくに彼の遊び論の可能性について考える。第4章では、子どもも含めて人間の行為の源泉にある情念(パッション)とそれを形あるものに具体化していくことが人間の行為の中心であると述べた三木清の思想を取りあげる。子どもの遊びの根源にあるもの、あるいは共同で遊びを展開していくことの意味を確認する。第5章では、現象学者のメルロ=ポンティの考えを取りあげ、表現行為としての子どもの遊びを考えていくための理論的視座を確認する。

第2部の保育・幼児教育の「場」からの発達を考える、の三つの章では、保育・幼児教育の場で子どもたちが示す表現行為の具体的な姿を捉え、それらの行為の意味を考察する。
第1章では、子どもたちの遊びの生成過程と、それを支えているモノ、空間の役割について考える。第2章では、絵本の読み聞かせの場面における子どもの聞く活動を取りあげる。聞くことは想像世界における表現行為であり、またそれは応答する行為へとつながっていくものである。第3章では、保育や幼児教育の活動の一部として位置づけられている子どもの描画活動を考える。描画や造形活動から人には何かを表現していこうとする根源的な欲求があることを教えてくれる(本書まえがきより)。

もくじ

第1部 発達をみる「視点」
 第1章 人間発達の「姿」を捉える
  §1 多様な関係の中で生きる人間と人間の営み
  §2 人間発達を捉える二つの視点:ピアジェとヴィゴツキーの発達理論
  §3 人間精神に対する哲学者たちの営み
  §4 人間発達の根源を探る営み
 第2章 自律性の発達:ピアジェの発達心理学
  §1 ピアジェのマクロ発達理論
  §2 発達:二つの自律性の獲得
  §3 ピアジェの社会学的研究:社会的活動、対人的感情
 第3章 ヴィゴツキーの発達理論と遊び論
  §1 ヴィゴツキーの理論とミクロ発達論
  §2 ヴィゴツキーとヴィゴツキー派の遊び論
 第4章 遊びの生成、パトスとロゴスの二つの働き
  §1 遊びを生成するものとしての表現行為:「構想力の論理」
  §2 パトスとロゴス、その相互連関
  §3 表現行為のための技術と身体・習慣
 第5章 表現行為としての遊び:メルロ=ポンティの「生成の現象学」から
  §1 人間精神の根源と始原を探る
  §2 人間の意味生成と表現の根源にあるもの:ゲシュタルト形成
  §3 表現行為を支えるものとしての身体
第2部 保育・幼児教育の「場」から発達を考える
 第1章 遊び:モノ、行為、空間の相互連関性
  §1 モノ―行為、そしてこれらの連関から生まれるストーリー
  §2 遊びのストーリー化と習慣
  §3 意味空間と子どもの遊び
 第2章 聞くこと、応答すること:絵本読み聞かせの世界
  §1 絵本読み聞かせと子どもの応答
  §2 絵本の読み聞かせがつくりだす世界:話し言葉によるやりとりがもっているもの
  §3 運動としての出来事と循環
  §4 絵本の世界における身ぶりと想像:人間の想像はどこから生まれるか
 第3章 描くこと、表現すること
  §1 絵画表現の根源にあるもの
  §2 子どもの体験の中から生まれる絵画表現
  §3 表現する営みがもっている「意味」

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